利拳よ 至上へ! - 疾る氷柱 -【石田衣良 ”翻す場所”】

 ゼロ年代を潜り渡って往こう際で、石田衣良さんの研敏に綴られてく続々な発刊枠には有意義な添助を為して戴きました。自らでは普段接触し難い範疇の多彩な甘受生理を知っておくにあたって、枕脇へすら呼び寄せておき易いアイテムなのでした。ライト且つクリア-なキレで赴く、捌いた材の鮮度が価させました。勿論、幾らかの私的陶酔へ向かえず流せておく嵌めに或るとし作中の登場者へ”濃念”な愛着は巡らさないが、フィルタ-の明網さをもって現・時節こそと醸される<囲気>が純析に掬い採れていました筈。五十ン冊並び終える2010年迄。

  石田衣良1<1>

 支持と秀筆を功して「IWGP」とは今や族称。ミステリ機能を十全に保ち、ドラマやコミック化も狂熱や質択に恵まれたと負えます。水鏡の如き投影先<池袋>で波紋されたNEWS事象の当惑滞在を、フリ-ピ-スなトラブルシューティングで掃いてく実母果物店補勤の兄ちゃんによる独白述式手法記。その、硬軟織り交ぜた洒脱癖は青っちょろく快(こそばゆ)い。圏内のみに限った鋭角&曇天な探索と、相互いし困窮へ泥濁させあう〔異和君世〕。西口公園での邂逅は皆Sweet? 課すればBetterなのでしょうか。 悪しき旨が闊歩し、萌芽塞ぎ込ます街。

 石田衣良2<2>

 語役のマコト(真島誠)が繋がるタカシ(安藤崇)はGボ-イズのキング。VIOLENTな収斂を専科とするHOT STUFFです。要はこの男の描写を詠むシリ-ズなのでした。

どこの史暦からも消せはしない”非位置な若層”はここにも。慕われ膨らみ強まったファミリアとして束ねられ、都市に於けた局面を千差で雑給なれど案じ日夜シノいでいる。武闘派とはメニュ-の一つに過ぎないが、統制と扼腕ぶりは極立って伝えられるべく然り。地元に割拠する本職も耳目を傾け、適分題に依らずも諸額な報酬へと辞させぬ共配関係にしてしまっている。

そんな中、「王タカシ」の”御尊顔”は抓んで映やされた覚えがないです。細身は速確な鉱筋、冷薄は英瞭な決志、絶大とのモテ状況、銘柄とのバリ融合にきて部品各選や毛髪の型及び長短には不届き。窪塚洋介さんの怪名演や造形貢献は掛値なく素晴らしかったけれども、イイの?

  石田衣良3<3>

 無敗の活殺術は、ボクシングのコンビネ-ションとフットワ-クをベ-スに、駆け、跳ね、弾め、軽ーく少し撃ち、重~く抜き鎮める。構わず、と撓る両脚までも愉しげに送る。万来の対は胸前で荒べば靭(つよ)く咽ぶと包(くる)む。 淡くなされてた命へ常、柔き懐に働き、

0℃の声背と蛇頭な渉言。右拳の会心直突は遠雷ダメ-ジ!早急な罅イク人骨は硝子の澄みで鳴るらしい。微かに閃く辺り路、軒下がりの尖端が暗行へ咲く。踵を返せば裾は旗めくが華の弁も数問われず舞っている斃すべき樹の貌。砥・イ・デ 運ぶ サ・ダ・メに凍みておこう。
fin
 
  石田衣良4<4>

亡くなった兄の仇討つ過去。KO冠る技の髄を獲得し昇り詰めていった、ブクロ工業高校篇。想いもしなかった、メモリアル・サイドスト-リ-は新設序章として文庫版にて初出なり。
ふさわしいスタイル/アィデアです、タカシに。(単走させきった近エピソ-ドなら絢爛装丁)
再び、石田さん買お!

写真:<1>深野未季 2010 <2&3>大関敦 2004 <4>表紙カバ-・新津保建秀 2014