連載自体は春、単行本化は夏迄に一応の全てを終了した物議っ子「多重人格探偵サイコ」。
自分にとっても二十年の長期、影法師の様な常に傍らへ寄り添う特異な一品と成りました。
共にこの時へ到達された方々は、簡潔な気風と複雑な痛手が入り交じる読後感を
それぞれお持ちでしょう。
総体の印象は、
<劇中でも欄外でも余りにも語り尽くされた果て、捨てバチに急がされて往々な弖虎坊>。
原作者と作画者の放棄と乖離の混合作用で、どうしても薄まっていく核心は経路を
見誤りそうにされてく。
殆どを預かりつつ責を果たした<鋭画家 田島昭宇>さんとの同調を頼りに漕ぎ着けた場所は
捻りもなく、~岸辺~。
嘗て、都心に在ったとされる-伊園犯罪研究所-から随分遠くへ我々も
運ばれて来てしまいました。
旧七人衆による乱痴気騒ぎなど時系柄としては、とっくに遥か彼方へ
千切れ飛んで行ってます。
読み返すに値しない外道達ですが、大概の男女と実質の差が有ると思えません。
最もたるだけで。
殊更、誉めるも失礼な冴えた線は忘れ去るべき業の粒でも彫るが如く
紙上へ創痕を滲ませます。
絶えず保護されてきた「雨宮一彦」は都度の所、何~にもしない本当に。
場面を立っているだけ。
潮流の只中に硝子として磨かれては知りゆくが居るだけ。
それが、要るだけそれは、射るだけ。
唯々…
渡久地のド阿呆が巻き起こした都庁ジャックへ向かう迎えのヘリを見据えながらも、
磨知に頼まれつつコンビニで別買いせざるを得なかった雨宮クンは
昼食が摂れない四課・鬼頭へその<冷やしラーメン>を恵む。
「やるよコレ・・・けっこうイケるぜ」 淡々と。
後、絶頂へ晒されても活躍解決には至らない。多少の乱し現わそうが。
視力は悪い雨宮一彦の眼鏡を他者が掛けた時に起こる観え具合自体が
<彼> なのでは、とした。
それを、<何か>ではない、と。
彼、綺麗で端正で静謐なのは分かるが当然、こちらは致命的な程にぼやけている。
大塚英志教授。そして、やはり遥か彼方のM。
ラスト回で美和の残留心象へ振り向いた雨宮一彦=弖虎体。その、途轍もなく覆いかぶさって来る徒労感。「草臥れて」
過度なる蒼白は、やがて・・・
fin